週刊サラマンカ大学新聞:2018年6月4日~6月10日号

暗さの極みという眼差し―ウナムーノに向けた日本人の絵画



日西文化センターにて
ウナムーノの著作から着想を得た、戸嶋靖昌の作品の展覧会は6月15日まで開催予定

写真キャプション:「日本人画家 戸嶋靖昌によるウナムーノへのオマージュ」展は日西文化センターにて鑑賞できる

 戸嶋靖昌の絵画はウナムーノの世界観から着想されているが、日西文化センターで展示されており、その暗い筆致を通してサラマンカ大学の総長ウナムーノの思想を感じることが出来る。
 展覧会は三つの章に分かれている。第一章は「人びとの信仰」と題される。戸嶋靖昌記念館副館長の執行真由美は「戸嶋はスペインに三十年近く暮らし、社会が大きく変わる1974年に到着した。その頃、日本ではウナムーノの素晴らしい翻訳が出版されたのです」と述べた。副館長は、戸嶋は決して「美しさ、豊かさ」といったものを書こうとはしなかった、それよりも「人びとの心の奥深くへ入りたかったのです」と続けた。
 第二章は、「魂の風景」と題し、ミゲール・デ・ウナムーノの風景に関するエッセイと関連する。「大地そのものに戸嶋は入り、その地霊を描きたかったという意味で、ウナムーノの文学と一致しています」と、副館長は述べた。また、展覧会の学芸員である安倍三﨑は第三章を「愛と痛み」と説明し、そのルーツは「ベラスケスのキリスト」にあるという。戸嶋とウナムーノを記念し、また日西外交150周年、サラマンカ大学創立800周年を記念し、本邦初訳で日本語の『ベラスケスのキリスト』が生まれた。
 戸嶋の作品はベラスケスを見つめ、そして質量を湛えている。「スペインの大地は、彫刻のようなものだ。また近距離では絵画が抽象的にしか見えないが、長距離では肖像が浮かび上がってくる」と説明され、また画家はスペインの光を反映しようとしていたという。戸嶋の絵の中に、専門家も日本の要素を捉えており、茶道などとも深く関係する墨絵の黒にも着想を得ているのではないかとのことである。
 執行真由美の言葉によると、画家はスペインを旅し、商業絵画の中にありながらも、自分自身を裏切ることなく、自らの芸術を追求して絵を描き続けたという。「明るく、綺麗な色が中心の印象派の絵画が流行だったが、戸嶋は表面的な美しさを描くというよりも、人間存在の本質を描きたかったのです」と説明した。
 戸嶋の足取りを辿った展覧会でもあり、ウナムーノによってサナブリア湖、サラマンカ、カスティーリャを旅し、「ウナムーノと全く同じように考えていた。ウナムーノによって大変に影響を受けていた」と学芸員は締め括った。
6月15日、月―金、10:00a.m.-2:00p.m.、6:00p.m.-9:00p.m.まで開館。

囲み記事: スペインの三十年の足跡をたどる展覧会

 絵画と文章 駐日スペイン大使館、セルバンテス文化センター東京にて、戸嶋の展覧会は大成功を収めた。

 戸嶋靖昌は日本人画家で、30年近くスペインに暮らした。日西外交樹立150周年記念とサラマンカ大学創立800周年記念する本年、戸嶋の展覧会が開催される。 同展覧会は2015年に駐日スペイン大使館にて、その後2017年にセルバンテス文化センターにて開催されたときには大成功を収めた。 今回の展覧会では、最も代表的な戸嶋の作品とウナムーノの文章を組み合わせて、またウナムーノの日本における翻訳の歴史も辿ることができる。 展示された作品は、各作品の着想源となったウナムーノの文章の抜粋と、そのエピソードとともに紹介されている。

写真キャプション:安倍三﨑(左)と執行真由美(右)、戸嶋靖昌の絵画と共に。