第14回「戸嶋靖昌 日本の軌跡」展
熱情の坩堝
展覧会パネル文章
戸嶋靖昌の生涯は、その熱情の奔流そのものであった。そう言っても決して過言ではない。芸術への熱情が、天を目指して燃え盛っていたのだ。それを人間の肉体が支えていた。戸嶋の深淵な苦悶がひしひしと私に伝わって来る。地をうがちながら這いずる戸嶋の苦悩が、その芸術を形にしつつあった。
その苦痛が、熱情の奔流を巨大な渦と化していたのである。若き日の戸嶋は、懊悩する青春であった。巨大な熱情が、ひとりの男の肉体をその坩堝と化して芸術の生合成を行なっていたのだ。坩堝は、その沸点を越えて煮え滾っていた。自己自身の芸術を目指す戸嶋の悲痛が、若き日の戸嶋芸術を形創っている。その熱情の坩堝を感じなければならない。それを感ずれば、自分の中に戸嶋のもつ芸術的誠実が突き刺さって来るに違いない。
執行草舟
- 〈展覧会 案内葉書〉「道の半ばで」 戸嶋靖昌 画
- 〈展覧会名〉
- 第14回「戸嶋靖昌 日本の軌跡」展
- 〈会期〉
- 2017年5月12日~8月19日
- 〈概要〉
- スペインへ渡る前の若き戸嶋の作品と、帰国後の晩年の作品を一同に展示いたします。セルバンテス文化センター東京にての「戸嶋靖昌の見たスペイン」展(2017.5.12-6.10)と合わせ、対比をお楽しみ頂ける展示内容です。