第25回「風の旅路」展
風の旅路
展覧会パネル文章
人間は、風の中に未知の神秘を感じていた。その神秘が、人類の歴史を築き上げたように思う。風の中に命の悲哀を見ていたに違いない。風が、夢を育んで来た。風が、思い出を運んで来た。そして風が、自分を未来の命へ導いてくれたのだ。風を科学で見るとき、人間は死滅するだろう。風の中に、魂と涙を見出すとき、人間は巣立つことが出来る。あのランボーは、風を生きたのだ。自らが風だった。その風だった自らを歌ったものが、ランボーの詩を生み出したと思っている。その「カシスの川」において、ランボーは風の響きを伝えている。「しかし、なんと健やかなのだろう、風は」と歌っていた。風はランボーの命だった。自らが風を歌い、そして自らが風と成り果ててしまった。私は人類の歴史に、多くのランボーを見出しているのだ。
執行草舟
- 〈展覧会 案内葉書〉家路 阿部平臣 画
- 〈展覧会イメージ作品〉風わたるグラナダ 戸嶋靖昌 画
- 〈展覧会名〉
- 第25回「風の旅路」 展
- 〈会期〉
- 2021年4月12日(月)~2021年6月26日(土)
- 〈概要〉
- 旅とは単に物理的な距離を移動することではなく、自己の中にある「何ものか」を発見するための、内面へのアプローチである。今回「風の旅路」と題し、風に誘われて旅立った芸術家たちの作品を展示。旅を通じて自己を発見していった芸術家たちの内なる声とは――。〈阿部平臣生誕100年を記念し、直方谷尾美術館、田川市美術館の阿部平臣展を後援。「風の旅路」展でも阿部作品を記念展示〉