第29回「春の夢影 ― あはれなるもの」展
春の夢影 ― あはれなるもの
展覧会パネル文章
我々日本人は、辿り着くことのない道を歩んでいる。到達不能の遠い憧れを仰ぎながら、我々の祖先は生き続けて来たのだ。だから日本人は、春の中に命の「あはれ」を見ることが出来る。雅の中に「もののあはれ」を見い出し続けて来たと言えよう。鈴木大拙は、このことを「日本的霊性」と呼んだ。美しさの中に生きる、生命の悲しさを見つめ続ける。その感覚だけが、我々日本人の魂を立ち上げて来た。花を愛さなければならない。しかし、その花の中に悲しみを見い出さなければ日本人ではない。雅の中に沈む、存在の悲しみ。それが恥じらいの魂を育んだ。その恥が、日本人を憧れに向かわせ、春の中に命の終焉すら感じさせて来たのだ。キリスト教の魂を、あのミルトンは「人間どもよ、恥を知れ!」という言葉で語っていた。そのような意味で、日本的霊性ほど深い宗教心はない。
執行草舟
- 〈展覧会 案内葉書〉阿呼詠詩 安田靫彦 画
- 〈展覧会イメージ作品〉酔美花 中原南天棒 書
- 〈展覧会名〉
- 第29回「春の夢影―あはれなるもの」 展
- 〈会期〉
- 2022年4月5日(火)~2022年6月11日(土)
- 〈概要〉
- あはれなるものは夢――。花咲く春に、その儚さが影となり忍び寄る。散りゆく生命に美を見出す日本独自の世界観とその武士道的生き方を、安田靫彦、菊池契月、中原南天棒を始めとする珠玉の執行草舟コレクションから展示します。また生死をその画布に籠めた洋画家 戸嶋靖昌の作品は常設展示します。