第5回「戸嶋靖昌と禅書画」展
戸嶋靖昌と禅
展覧会パネル文章
戸嶋靖昌の芸術とは、あるいのちの痕跡なのだ。そこには、喘ぐよう呻きと、抉られた肉から滴る血が滲んでいる。その血と呻きを、屹立したひとりの男の骨が見つめている。戸嶋自身である。私に伝わる戸嶋芸術は、このような「震動」を持っている。吼え叫ぶ野蛮が、この芸術を支えているのだろう。この感覚は、私が若き日に、白隠の墨跡に接したときの記憶に重なるのだ。うねるような野蛮が、二次元を穿つ意志力によって支えられている。つまり、垂直の奥行きと呼ぶべきものであろうか。そこに私は、自己の命を滅却して、他の生命を愛する高貴性を感ずる。祈りであろう。その祈りを戸嶋は愛していた。戸嶋は、放擲されたいのちそのものであった。だからこそ、白隠の祈りがわかったに違いない。白隠は、己が祈りを芸術となした。その禅的な祈りを、私は戸嶋の中に見い出しているのだ。
執行草舟
- 〈展覧会 案内葉書〉左書:白隠 虚空蔵菩薩 右絵:戸嶋靖昌 夜の草舟
- 〈展覧会イメージ作品〉「森」 戸嶋靖昌 画
- 〈展覧会名〉
- 第5回「戸嶋靖昌と禅書画」展
- 〈会期〉
- 2013年3月8日~6月8日
- 〈概要〉
- 執行草舟コレクションでは、白隠、南天棒、神月徹舟、山岡鉄舟を中心に、禅の系譜を一にする書画を所蔵しています。各様に個性的な字と画で表わしながら、根底では同じ禅の道へと通じています。白隠の書を好んだ、戸嶋靖昌の作品と禅書画を織り交ぜ展示いたします。