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第16回「抽象と具象ので」展

抽象と具象の展覧会パネル文章

 「恐るべき美が生まれた」そうイェーツは言っていた。戸嶋靖昌の絶筆に触れた時、私の脳裏にはこのイェーツの詩行が甦ったのだ。それは、ある存在の質量が苦痛と共に形を成しているひとつの「深淵」であった。その苦痛が、私の心魂を寒からしめたのである。苦悩が、天を目指す形に成ろうとしてんでいた。そこには形が描かれていたが、それは形ではなかった。それは、宇宙空間に向かって放たれた、一つの嗚咽に違いない。形をもつ絵画が、自らの重力によって、その形を溶解されているのだ。重力によって歪められた空間には、宇宙の幾何学が存在することになるだろう。形をもつ具象の芸術が、宇宙の質量によって殺されて行く。そう、新しい芸術の誕生のために。その生命の境界線の渦に、具象と抽象の淵源が横たわっている。具象を描こうとした戸嶋靖昌が、ある抽象の質量に魅入られた時空を私は見たように思う。
執行草舟
  • 〈展覧会 案内葉書〉「屈折」 山口長男 画
  • 〈展覧会イメージ作品〉「風の光線」 戸嶋靖昌 画
〈展覧会名〉
第16回「抽象と具象ので」展
〈会期〉
2018年2月26日~8月4日
〈概要〉
形をもつ具象の芸術が、宇宙の質量と重力によって抽象へと彷徨う。執行コレクションの中から、抽象と具象の間で揺らぎながら、描く対象と格闘した山口長男、戸嶋靖昌他、選りすぐりの作品を展示いたします。

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