第17回「日本の精霊 ―戸嶋靖昌の見た天地―」展
日本の精霊
展覧会パネル文章
戸嶋靖昌は、精霊を見ていたのだ。天地が生み出す精霊によって、その絵画を成立させていた。天地の間にある別の天地が戸嶋の心を震わせていた。人間のことである。戸嶋は、この世のすべてのものにこの精霊を感じ続けた。山や森がもつ、崇高なるものを摑もうとした。その崇高が生み出す霊気を求め続けた。精霊を仰いでいたのである。人間のことは、天地の闇を埋める精霊だと思っていたに違いない。人間のもつ熱情の中に、戸嶋は憤怒の精霊を見ていた。人間のもつ優しさの中に清冽の精霊を感じていたのだ。すべてが精霊であった。だから、すべてに崇高を感じていた。しかし私はいま思っている。戸嶋靖昌は己れ自身が、精霊だったのだ。戸嶋芸術の中に存する、精霊だけにしか描くことの出来ない「崇高」に気づき始めているのだ。
執行草舟
- 〈展覧会 案内葉書〉道 撮影:戸嶋靖昌
- 〈展覧会イメージ作品〉「雑木林」 戸嶋靖昌 画
- 〈展覧会名〉
- 第17回「日本の精霊 ―戸嶋靖昌の見た天地―」展
- 〈会期〉
- 2018年8月13日~12月1日
- 〈概要〉
- 天地やわらかなる日本で、逆光を追い、木々の奥行きへと誘われ、ついには岩礁の美に自身の生死を見た戸嶋。また、晩年には水墨画の境地を洋画に表現しようとした画家は何を日本に見ていたか。若き日に撮影した奈良仏の写真や、スペインへ渡った後に制作した能面なども展示し、軌跡を追います。