草舟座右銘

執行草舟が愛する偉人たちの言葉を「草舟座右銘」とし、一つひとつの言葉との出会い、想い、情緒を、書き下ろします。いままで著作のなかで触れた言葉もありますが、改めて各偉人に対して感じることや、その言葉をどのように精神的支柱としてきたか、草舟が定期的にみなさまへご紹介します。ウェブサイトで初めて公開する座右銘も登場します。

  • ジョージ・バークリー『人知原理論』より

    認識されることによって、存在はある。

    《 To be is to be perceived. 》

  我々は、人間である。そして、その人間とは何をもって言うのか。古来、多くの哲学者が、その人間の本体を「霊魂」と名指していた。人間とは、我々が思っている肉体ではないのだ。少なくとも、肉体は人間の付随物に過ぎない。人間は、魂の生き物である。その魂は、宇宙の魂と一体となっているのだ。我々人間の魂は、宇宙を包含している。そして宇宙は、我々の魂の中で生き続けている。我々の魂が無ければ、実はこの大宇宙もまた無い。
  それが、認識というものの本体である。我々人間の魂が認識したもの以外は、宇宙に存在物はない。あのニーチェが、『ツァラツストラかく語りき』において、太陽に語りかけた問いはこのいなのだ。照らされている自分がいなければ、太陽の存在もまた無いというあの件だ。事実、人間の認識だけが宇宙の存在を支えている。これは最新の量子物理学においても、かなりの精度で解明されて来た現実である。この宇宙は、我々の魂が創っている。また、我々は宇宙の魂によって創られているのだ。
  我々人間がいなくなれば、この宇宙は消滅する。我々とは、もちろん魂のことを言っている。そして、宇宙が消滅すれば、我々の魂もまた消滅するのだ。だから我々人間にとって、この魂の認識力よりも重大なことはない。我々から魂の認識力が去れば、いま感ずることの出来るこの世界はなくなるのだ。すべての物質が、この世から消滅する。宇宙の次元は、無限に存在することが分かっている。その中で、我々のいるこの宇宙は、我々の魂の認識の力によってその存在が支えられているのだ。

2021年2月22日

掲載箇所(執行草舟著作):『根源へ』p.19
ジョージ・バークリー(1685-1753) アイルランドの哲学者・聖職者。トリニティ・カレッジの研究員を務める。2度にわたるフランス、イタリア遊学ののちアメリカ先住民の教化のために渡米。帰国後はアイルランドの主教として著述と地方の教化に専念した。代表作に『視覚新論』、『人知原理論』等がある。

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