草舟座右銘

執行草舟が愛する偉人たちの言葉を「草舟座右銘」とし、一つひとつの言葉との出会い、想い、情緒を、書き下ろします。いままで著作のなかで触れた言葉もありますが、改めて各偉人に対して感じることや、その言葉をどのように精神的支柱としてきたか、草舟が定期的にみなさまへご紹介します。ウェブサイトで初めて公開する座右銘も登場します。

  • ジョン・ミルトン『失楽園』より

    正しく立てる者も自由に立ち、堕ちた者も自由に堕ちたのだ。

    《 Freely they stood who stood, and fell who fell.》

 私は、自己の生命の独立自尊を何よりも重んじて生きて来た。そのために払った代償は言葉には言い尽くせない。魂の直立のためには、自分の肉体を投げ打つことは当たり前だと思っている。そう言えば、独立自尊の意味が分かると思う。その独立自尊の真の意味を私に教えてくれた人物が、英国のオリヴァー・クロムウェルとジョン・ミルトンなのだ。その清教徒革命に、私の魂にある武士道が震撼したことを覚えている。
 人間が生きるとは、その魂が生きることである。私はそう思っている。この私の信念と最も魂の共振の深い人々が、英国の清教徒だと言えるのだ。自己の魂の自由を何よりも重んずる生き方。それが自己の生命の独立自尊だ。私はそれを実行するために、「ただ独りで生き、ただ独りで死ぬ」という生き方を貫いて来た。すべてが自己の責任であり、すべてが自己から発している。それが本当の人生だと私は信じているのだ。宇宙と対峙する、ただ独りの自己。それこそを、本当の自己だと私は信ずる。
 正しいことも自己の責任であり、間違ったことも自己の責任なのだ。どのような不合理も我が運命である。だから、それは愛すべきものと言っていい。幸福も不幸も、そして健康も病気もすべて自己の責任なのだ。なぜなら、自己の生存には尊厳が有るからだ。宇宙の深奥から直接に降り下ったものが、我が生命である。生命とは、与えられた自由ということに尽きる。だから、それは高貴で崇高でなければならない。すべての責任が自己にあるとは、我々の魂と肉体の尊厳に基づく思想なのだ。

2019年5月10日

掲載箇所(執行草舟著作):『「憧れ」の思想』p.188
ジョン・ミルトン(1608-1674) イギリスの詩人。ピューリタン革命に参加。言論の自由を主張し、共和政府を擁護。王政復古後の失意のうちに失明、口述で記した最大の文学叙事詩『失楽園』 を始め、『復楽園』、『闘士サムソン』を書き、イギリス最大の詩人としての地位を確立。

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