草舟座右銘

執行草舟が愛する偉人たちの言葉を「草舟座右銘」とし、一つひとつの言葉との出会い、想い、情緒を、書き下ろします。いままで著作のなかで触れた言葉もありますが、改めて各偉人に対して感じることや、その言葉をどのように精神的支柱としてきたか、草舟が定期的にみなさまへご紹介します。ウェブサイトで初めて公開する座右銘も登場します。

  • アルチュール・ランボー『地獄の季節』

    我々は聖霊に向かって()くのだ。

    《 Nous allonns à l'Esprit. 》

 私は、ランボーを愛する。その運命を愛しているのだ。青年の頃、ランボーと日々を共にして生きていた時期があった。その『地獄の季節』を中心として、私はまさに寝食を忘れて読み続けた。そして、ランボーが仰ぎ見たものを私も見たのである。それが「聖霊」なのだ。ランボーは聖霊を仰ぎ見て生きていた。その聖霊を私は心底から愛するのだ。私にもその聖霊が見えるようになった。その聖霊は人間存在の原点を穿っていた。
 私は武士道だけの人間である。武士道の不合理に哭き、その矛盾と格闘して生きて来た。私の武士道は「無頼の精神」である。つまり楠木正成の心意気ということだ。そして、無頼には憧れがある。不良には不良の名誉というものがあるのだ。それが、ランボーの聖霊と溶け合っているのである。私はランボーによって、武士道の中に聖霊を見出すことが出来るようになった。武士道に生きる私の運命が、聖霊に向かって生きていることを知ったのだ。武士道によって、人間の憧れを摑み取れるかもしれないと思った。
 私はランボーの導きで、人間の実存を支えている聖霊と出会った。その聖霊が、我々人類の文明を生み出したのだ。その聖霊によって、我々の魂は呻吟と慟哭の叫びを上げる。そして、永遠を渇望する我々人類が生まれたのだ。私は、その聖霊と出会った頃から現世には興味がなくなった。現世を創り上げた「何ものか」と向き合いたいと思った。つまり聖霊である。そして、人類を創り上げたその原点を摑みたいと思ったのだ。

2019年7月1日

掲載箇所(執行草舟著作):『夏日烈烈』p.96、『風の彼方へ』p.97
アルチュール・ランボー(1854-1891) フランス印象派の詩人。早熟な天才として、ユゴーや高踏派の影響を受け詩作を始める。数々の作品を発表するが、1875年以後は文学を捨てヨーロッパ、アフリカを放浪。象徴主義の詩人として、20世紀文学に決定的な影響を与えた。代表作に『地獄の季節』、『イリュミナシオン』等。

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