草舟座右銘

執行草舟が愛する偉人たちの言葉を「草舟座右銘」とし、一つひとつの言葉との出会い、想い、情緒を、書き下ろします。いままで著作のなかで触れた言葉もありますが、改めて各偉人に対して感じることや、その言葉をどのように精神的支柱としてきたか、草舟が定期的にみなさまへご紹介します。ウェブサイトで初めて公開する座右銘も登場します。

  • ジョージ・オーウェル「言行記録」より

    偽りの蔓延する時代には、真実を言うことが革命の遂行となる。

    《 In a time of universal deceit, telling the truth is a revolutionary act. 》

  真実を言うことは、命がけのことである。少なくとも、自分の社会的立場を失う覚悟を決めなければ、本当に何も言うことは出来ない。真実とは、そういうものだ。そうでないものは、元々真実でも何でもないのだ。言葉の遊びに過ぎない。民主主義と悪平等が来るところまで来てしまった現代は、まさに「遊び」の他は生きる場所が無くなった。真実を思うこと、真実を言うこと、真実を行なうこと、これらのことは等しく自己を失うことに繋がりかねない。
  真実を言えば、殺される時代がある。しかし歴史を見ると、そのような時代の方が人間は真実に生きようとしているのだ。権力が真実を圧殺する時代の方が、我々は真実に目覚める。最も恐いのは、何を言っても良いと言われる社会なのだ。まさに現代がそれだ。何を言っても良いということは、何を言っても通らないことを意味している。だから、良いのだ。つまり社会通念が、「空気」として固定してしまった社会なのだ。
  自由と平等そして優しさを標榜する社会が、最も恐ろしい。それは、すべての真実を覆い隠すだけの「正義」があるからだ。我々は、そのような時代を生きている。だからこそ、真実を言うには、命がけの勇気がいるのだ。自己の人生を失い、自己が悪人に堕する覚悟がなければ何も出来ない。現代社会において、真実を言えばそれだけで革命が起きる。自己がそう生きれば、それが分かるのだ。真実に生きようとしたとき、オーウェルの言葉は腸の奥に沁みるのである。

2021年4月5日

掲載箇所(執行草舟著作):『「憧れ」の思想』p.202
ジョージ・オーウェル(1903-1950) イギリスの小説家。ロンドン、パリを放浪後、教師や書店員をしながら執筆を続ける。スペイン内戦に民兵として参加した経験を『カタロニア賛歌』として発表。のちに『動物農場』と『1984年』を書きベストセラーとなる。ほか『象を撃つ』等。

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