草舟座右銘

執行草舟が愛する偉人たちの言葉を「草舟座右銘」とし、一つひとつの言葉との出会い、想い、情緒を、書き下ろします。いままで著作のなかで触れた言葉もありますが、改めて各偉人に対して感じることや、その言葉をどのように精神的支柱としてきたか、草舟が定期的にみなさまへご紹介します。ウェブサイトで初めて公開する座右銘も登場します。

  • バーナード・ショウ『悪魔の使徒』より

    無関心こそが、非人間性の本質である。

    《 Indifference is the essence of inhumanity. 》

  非人間的とは、何のことを言うのか。英国の作家バーナード・ショウは、それを「無関心」であると言っていたのだ。残虐でも憎悪でもない。人間にざることは、無関心だと言った。私はこの思想と出会って以来、この無関心の問題を考え続けて来た。そして愛の対極に位置するものも、また無関心であることに気付くときがあったのだ。人間の魂が、何らかの使命によって創られたと理解したとき、この言葉の意味は体内の奥深くに沈潜したのである。
  人間は何事かを成すために、この地上の客となった。そうでなければ、人間などという代物はこの地上には必要ないのだ。我々は、ひとつの宇宙的意志によって生み出された。その意志は、この大宇宙に実在として現存している。それを見詰めること。そしてそれと親しむことが大切となる。それらは我々の目の前に存在するのだ。我々は、この世を観るために生まれた。この世を感ずるために生まれたのだ。そして、この世の本質を抱き締め、それを愛するためにこの地上に来た。
  人間の使命に思いを巡らせば、無関心の本質的意味も分かって来る。無関心は、単なる性質などというものではないのだ。それは人間の否定に繋がっていく。虚無の入り口なのだろう。では何に関心を持てばいいのか。我々が使命を帯びた人間である以上、それは人類の発祥から決まっていることだ。宇宙に思いを馳せ、生命の神秘と真っ向から対面し、人類の文明と格闘し続けることに尽きる。そして、そのような人間の使命に生きた人々の魂との真の交流である。我々は死ぬまで、思索し働き続けなければならないのだ。

2022年9月3日

バーナード・ショウ(1856-1950) ダブリン生まれのイギリスの劇作家・評論家。文芸・美術・音楽・演劇の批評家として世に出る。のち様々な戯曲を発表。辛辣な風刺に満ちた独自の表現で知られる。代表作に『人と超人』、『ピグマリオン』等がある。

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