草舟座右銘

執行草舟が愛する偉人たちの言葉を「草舟座右銘」とし、一つひとつの言葉との出会い、想い、情緒を、書き下ろします。いままで著作のなかで触れた言葉もありますが、改めて各偉人に対して感じることや、その言葉をどのように精神的支柱としてきたか、草舟が定期的にみなさまへご紹介します。ウェブサイトで初めて公開する座右銘も登場します。

  • ホセ・ガルシア・ロルカ『ロルカ詩集』「水に傷つけられた子ども」より

    私は、私の死を死にたいのだ。

    《 Quiero morir mi muerte. 》

 死に向かって生きる。それが我々人間の宿命である。死だけが、人間を永遠に結び付けてくれるのだ。そして、休息が与えられる。我々の紅蓮の生命に、静謐な永遠が与えられる。死によって、我々の生はその意味を決定される。棺が覆われて、我々の人生は定まる。だから死を想うことだけが、我々を真に生かすのだ。自分の死を想わなければならない。自分の死だ。人間の死ではない。自分だ。自分の死を考えることによって、我々は初めて自分の足で立ち上がることが出来るのだ。
 私はロルカの詩を愛する。そしてロルカの生き方を愛する。美しい人間だった。生命の崇高を知る人間だった。優しい人だったが、権力には決して屈せぬ人だった。真の勇気だろう。ロルカのこの詩句に出会ったとき、私の魂は震撼した。ロルカの死の深奥が、この言葉によって私の肚の底に落とされたのだ。ロルカの魅力は、自己固有の人生を生き、自己固有の死を与えられたことだろう。しかし、それは偶然ではなかったのだ。それがロルカの祈りだったと知った時、私は哭いた。
 自分の人生を生きたい者は、自分だけの死を死ななければならない。自己固有の死である。それが人間の本当の死だ。私はこのロルカの詩によって、自分の死を本当に想うことが出来た。それによって、私は自己固有の生き方を出来るようになったと思っている。私は自己固有の死を必ず迎える。この決意が、私の自己固有の生き方を支えているのだ。ロルカの詩は、私の魂に測り知れない豊潤をもたらしたのである。自分だけの死を死にたい者には、自分だけの生を生きる人生が与えられる。

2019年9月9日

掲載箇所(執行草舟著作):『憧れの思想』p.218、『孤高のリアリズム』p.150
ホセ・ガルシア・ロルカ(1898-1936) スペインの詩人・劇作家。故郷アンダルシアの精神を独自の世界観で謳い上げた『ジプシー歌集』が有名。自ら積極的に劇作を行なう傍ら、古典劇の普及に努めた。スペイン内戦勃発後、独裁者フランコ側に射殺された。代表作に『血の婚礼』、『イェルマ』等。

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