草舟座右銘

執行草舟が愛する偉人たちの言葉を「草舟座右銘」とし、一つひとつの言葉との出会い、想い、情緒を、書き下ろします。いままで著作のなかで触れた言葉もありますが、改めて各偉人に対して感じることや、その言葉をどのように精神的支柱としてきたか、草舟が定期的にみなさまへご紹介します。ウェブサイトで初めて公開する座右銘も登場します。

  • ウィリアム・シェークスピア『ハムレット』より

    これは狂気かもしれない、しかし筋が通っている。

    《 Though this be madness, yet there is method in‘t. 》

人生で最も大切なものは、決断である。自己の生命が燃焼するのか、しないのかはそれによって決まる。岐路における自分自身の覚悟だ。恐怖を乗り越える勇気だ。それだけによって、自分の人間燃焼は決定する。ひとりの人間として、自己の生命を生き切らなければならない。生き切れない生命は、燻り果てて腐る。人生とは、その二つに一つの選択と言ってもいい。二つに一つ、それを決定できるものは狂気しかない。勇気を伴う狂気である。
 狂気の決断が出来るか、出来ないかによって、その後の人生は決まる。私は決断のとき、必ず困難で辛く収入も少ないものを選んだ。困難を克服することだけが、生命を燃焼させるものだと思っていたからだ。困難なものだけが、私の中に独自の論理を創り出す力をもたらしてくれた。だから自己の運命を切り拓くものは、私の場合は必ず困難と勇気だった。それを受け取り、それを抱き締めて突進することだけによって、私は自己の人生を切り拓いて来たのだ。
 死にもの狂いの突進は、私に壮大な夢と遠大な運命を与えてくれた。切り拓くたびに、その運命は美しく大きくなったように思っている。冒頭の『ハムレット』の呻吟を私は愛して来た。ハムレットは、私の決断のとき、必ず横にいてくれた親友だった。それは『葉隠』の精神と同じものだった。その精神は、ヨーロッパにおいてはキリスト教が担っていたと後年になって知った。そして、その精神は狂気であり論理だった。勇気と科学の婚姻だった。

2020年1月11日

掲載箇所(執行草舟著作):『根源へ』p.444
ウィリアム・シェークスピア(1564-1616) イギリスの劇作家・詩人。初めは俳優としてロンドンに出て来たが、のち座付作者として戯曲を創作。四大悲劇と呼ばれる『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』、『マクベス』をはじめ、『ジュリアス・シーザー』等数々の傑作を発表。後の文学者に大きな影響を与えた。

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